Chapter2:はじまりのポートレート / 被写体を通して自分と向き合う

1994年パリの路上で撮影した一枚のポートレート。ずっと気になっていたその男性は、いつも車椅子の上で弱々しく項垂れ顔を見ることもできなかった状態でしたが、写真を撮らせてくださいと声をかけると「もちろんだよ」とこの写真そのままの佇まい。撮影後に彼からかけられた「俺はここから応援している、絶対有名になれよ。」の言葉と「もちろんだよ」と答えながら突然空気が変わったあの瞬間は今も忘れられず、彼に対する尊敬と感謝の気持ちはずっと持ち続けています。少し演出された心の外在化のために撮っていた作風はパリで発表することにより一段落していましたが、その次のステージになるであろうこの作品の続きの撮影は、それから20年も後になるとは想像すらできませんでした。初めて正面から一対一で被写体と向き合った「はじまりのポートレート」は、被写体の存在そのものの描写を優先しようと意識しながらも、当時まだ未熟だった僕が被写体を通し自分と向き合う事の必要性を知るきっかけになった作品でもあります。