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ポートレートと心理学/存在認知(ストローク)について

私がポートレート撮影のコンセプトに置いている存在認知(ストローク)、

今日は日常でのそれについて少し書いてみます。


人の心はストロークがないと生きていけない。


心理学用語で存在認知とも呼ばれるその定義とは


「あなたがそこにいることを、私は知っている」


ストロークを簡単に言うと、人と人とのやりとりの全てであり、言語だけではなく非言語(笑顔、無表情、目があう、ハグなど)も含まれます。


そしてストロークにはプラスとマイナスがあり、プラスのストロークとは共感、褒める、笑顔、撫でるなどポジティブなもので、マイナスのストロークとは否定、貶す、睨む、殴るなどネガティブなものです。


基本的にプラスのストロークは、プラスのストロークでしか貰えません。


人は本来プラスのストロークを欲しているのですが、プラスのストロークが貰えない状況にある場合には、マイナスのストロークでもいいからちょうだいという言動にでます。

何故なら、上記にも書いたように、人の心はストロークが無いと生きていけないのです。

故に人が対人において強い不安や恐怖を感じたりするものは、無視・無反応になります。


ある見聞によると、人が薄暗く何もない部屋で、ひとり寝たきりの状態でいた場合、蚊が鼻にとまっただけで安心感が得られるという状況は72時間以内に現れるそうです。

これは蚊から「あなたがそこにいることを、私は知っている」という存在認知(ストローク)を与えられたことによるもので、人の心にとってストロークがどれほど重要なものかを知ることができます。


人が日常でどの様なストロークの交換をするのかは、幼少の頃の環境により習慣化されると言われています。

例えば、親や養育者が、マイナスのストロークを習慣としている場合、そこで育てられた子どもはマイナスのストロークのやりとりを習慣としてしまうことが多いのですが、異なる環境や社会での経験と学びにより、やりとりするストロークの質や習慣をある程度変える(変わる)ことは可能でしょう。


ここでわかりやすい話をひとつ。


以前、お豆腐を売り歩いている友人がいました。

その友人の話によると、お豆腐くださいと家からおばあちゃんが出てくるのですが、お豆腐一丁を買うのに20分も話し込むそうです。

これはもしかしたら、お豆腐を買うことが最優先の目的ではなく、他者とのストロークが欲しくてお豆腐を買っているのかもしれません。


また、スーパーで怒鳴りながらクレームを入れているおばさんやおじさんも、最優先の目的はストロークを得ることなのかもしれません。

そうなるとこれはまさに上記にも書いた、プラスのストロークが貰えないならマイナスでもいいからちょうだい、な状態です。

とはいえお客様は神様的な捉え方がまだ色濃くある日本においては、マイナスのストロークがプラスになって返ってくるので、彼らにとってこんな心地の良いところは他に無いのかもしれません。


特に高齢になり社会的な活動範囲が狭くなるとか、周りに人が減ってくるなどの環境におかれる場合には必然的にストロークが不足してくるものです。


若者がホストにハマる大きな要因のひとつにもこのストローク不足が関係していると考えます。

ネット社会になりしばらく経ちますが、当たり前になってしまったSNSでの交流よりも人とリアルに会う方がストロークを得る満足度は大きいでしょう。

プラスのストロークが不足しているという状態で、直接会った異性からプラスのストロークを立て続けに浴びせられると、相手に対して好意を持ったり、勘違いしてしまう可能性も低くはなく、相手はそれを目的として意識的に行っています。


詐欺もまた然り。


また当初Facebookが浸透した理由は、人がストローク(存在認知)を欲する生き物であるということと、簡単にクリックするだけで「良いね!」というプラスのストロークのみを得ることができたこと。


このシンプルなやりとりこそが人の本質だと、私は考えています。


自分にはプラスのストロークが足りているだろうか。

自分はどんなストロークを求めているのか。

また、年齢を重ねるにつれ、プラスのストロークが貰える環境を意識的に選んだり作ったりしているだろうか。


日常でその様な意識を持つことで、より健康的な生活を送ることができると私は考えています。


そして最後に


私が撮るポートレートは、最低限で最大限のストローク(存在認知)であり、日々それに向け努めています。


初めましての撮影現場から始まり、出来上がった写真を日々の日常で眺め、また数年後にそのポートレートに思いを馳せる頃、そこにある本質、その本来の意味を深く感じ、理解できるかもしれません。



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